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AIがプロ野球選手の顔を自動判別。1試合3,000枚の写真を数分で処理
~MicrosoftのAIが富士フイルムのIMAGE WORKSに実装
2018年11月26日 15:04
日本マイクロソフト株式会社は11月26日、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が手がけるクラウドベースの法人向けコンテンツ共有/管理サービス「IMAGE WORKS」に、AIを活用したスポーツ写真の人物特定機能を提供したことを発表し、都内で説明会を開催した。
IMAGE WORKSは、一般社団法人日本野球機構(NPB)が球団および野球選手らの写真を管理運営するNPB CIC(Contents Images Center)にて使われており、NPBは企業や報道機関、ゲーム会社などにそれらの写真を有償提供するのに利用している。
各球団の公式カメラマンが撮影する画像は年間で120万枚ほど。1試合で3,000枚にものぼり、そのなかから300枚程度の写真を選別するとともに、タグ付けを行なうという作業をこれまで人力で行なっていた。NPBはこれらの作業が1試合の時間よりも長い約4時間を要していたが、AI活用によって30分ほどに大幅短縮可能になったという。
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 イメージテック事業部 クラウドメディア営業部 課長の松下太輔氏は、IMAGE WORKSで今回実現したシステムについて、MicrosoftのCognitive ServicesによるAIで顔認識を行なうとともに、富士フイルムイメージングシステムズが独自に開発したシーンの判定機能(バッティングやピッチングの状態、走塁/守備、右打ち左打ち/右投げ左投げなど)を組み合わせたほか、NPBが提供する試合の公式記録(試合日や回の表裏など)をもとに90%以上の認識率を実現できたという。
NPBによると、これまでは選別において選手に関する詳細な知識を有する作業者が求められ、かなりの負担を強いられていた。とくに背番号が写っていない写真など、判断に迷うものも少なくなく、その部分はAIによって大きな軽減につながる。AIが判別に迷った場合は、複数名分の選手を提示して作業者に選択させるといった挙動で、完全自動化されているわけではないが、いずれにせよ最終的な写真の正誤確認と登録は作業者自らが行なう。AIが人の補助をするというMicrosoftが掲げるモットーに即した活用と言えるだろう。
IMAGE WORKSのこの機能は2018年6月から広島東洋カープを初めとする5球団で試用がはじまっており、2019年のシーズンより全球団において本番化する予定。なお、2016年2月からのNPB CICの利用実績は、登録写真枚数が54.4万枚(約2TB)、写真利用申請件数約6,000件(月平均187件)、写真貸し出し枚数約46,000枚(月平均1,447枚)とのことで、ロイヤリティによって10億円規模の利益を上げているとのこと。
日本マイクロソフト株式会社の業務執行役員 クラウド&エンタープライズ本部 本部長を務める浅野智氏は、MicrosoftのディープラーニングフレームワークであるCognitive Toolkitによって、顧客が求める独自判定のAIをスピーディーに開発できることをアピール。今回は野球に特化した認識モデルを構築してみせたが、実際富士フイルムイメージングシステムズによるとIMAGE WORKSへの同機能の実装は構想から1年足らずで行なえたとしている。
IMAGE WORKSは自社のプライベートクラウドと、Microsoft Azureを組み合わせたハイブリッドクラウドになっており、顔認識の処理の部分はAzureサーバーにて行なわれる。Azureでの自動タグ付け処理は100枚で約2分弱、500枚でも2、3分としているが、分散処理されているため、枚数が増大しても一定の伸び率に留めることが可能という。
今後は選手の表情なども判定できるような新たな検索方法や動画での展開も考えられているとのことで、NPBでは選別が容易になったことから、B2BだけでなくB2Cでの展開も視野に入れているという。